昨年6月、『世界で戦える人材の条件』を出版しましたら、『月刊人事マネジメント』の発行人伊藤彰彦氏から「あとがきのあとがき」というコラムに”著者から人事担当者へのメッセージ”を書くように頼まれました。ちょっと面白いタイトル・・・

 今回問題にしたいのは、人事担当者が外部講師による企業セミナを行うたびに参加社員に配るアンケートによる評価の評価です。セミナ講師としてなりわいを立てている人たちが集まると口をついてでてくるのは「人事担当者がもう少しちゃんとわかってくれたら」とか「人事担当者がもっとグローバルだったら」という言葉です。

 私も含めて講師たちは、セミナを開催した後人事担当者からカラフルに色分けした『満足した人何パーセント、しない人何パーセント、理由多い順に・・』といったアンケートの結果をまとめたグラフや図が送られてくると、『人事はこれで評価という仕事をしたつもりなの?』と一気に不満足度が上がってしまうのです。

 特にグローバルビジネスのセミナの目的はこれまでの階層別研修のそれとは全く違います。トマス・フリードマンが『フラット化する世界』で指摘しているように世界中の人々は2000年頃ある朝めざめて個をグローバル化することによって絶大な力を持ちうると気づいた、その中に日本人はほとんど含まれていなかった、だからこそ日本人の個をグローバル化するお手伝いをするのがセミナの重要な目的だと私は思うのです。階層別研修では年齢や肩書きが上がるにつれ前より難しいことを学ぶのですが、グローバル研修では新入社員から幹部まで重要な情報(例えば企業のグローバル戦略)は共有し、ベクトルを合わせて同じ方向に進むことがとりわけ重要です。

 日本に生まれ、教育を受け、就職すると自覚症状はありませんが日本的マインドを育てています。これを1日か2日の研修で世界全体を映し出すグローバルマインドに変えるには、受講者は講師をコーチとみなして虚心坦懐に学ぶのが一番効果的です。セミナの終わりにはたいていの参加者が自分のものの見方が確実に広がり、今まで見えなかったものがよく見えるようになったと感激する、そこに彼らを評論家にするようなフィードバックシートが配られると、まるで熱い心に水をかけるようなもので、元の日本的マインドに戻ってしまいやすい。これでは何のために研修をしているのかわかりません。

 それではグローバル教育の場合、どのようなフィードバックシートが理想的でしょうか? 今や国内市場も世界市場の一部であり、
日本人も世界標準で仕事ができる能力が求められています。ですからどれだけ世界標準に挑戦できたか、自己評価をしてもらうのが一番いいでしょう。そしてプログラムの内容や教え方を含め、今の思いを率直に作文してもらう、カラフルなグラフや図に加工したものよりもこの一人一人の肉声こそが聞きたいのです。

 このようなことを私はこれまでしっかり人事担当者に説明してきたでしょうか? NOです。研修担当の方、説明されなければわかりませんよね。では、図を公開します。

研修の比較

 最後にもう一言。今世界のトップクラスのグローバル企業と言われている企業は90年代に体質改善のためのあらゆる努力をしました。

 その時もいまもグローバル化の背後にある哲学は統合(インテグレーション)です。インテグレーションとは選択と集中。人事の方たちも参加者の評価によって揺れ動くのではなく、本物の研修ができる会社を選んでチームで向上していける体制を築くことをお勧めします。

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