2017年8月5日
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┃■┃■┃ 渥美育子オフィシャルメールマガジン  No.7    ┃■┃■┃

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みなさん、こんにちは。

暑いですね。日本は日々の天気に一喜一憂しているだけで1年があっという間に過ぎてしまう国です。確実に進んでいるのは北朝鮮の大陸間弾道ミサイルや中国による“一帯一路”開発だけ(?) あと1週間でお盆ですが、休みどころではありません。国民を犠牲にして破壊的な大型プロジェクトを進める“異形国家”をいま、私たちは注視する必要があります。これを地球上の常態にしてはいけません。

今回は、

(1)規模の経済への誘惑によって、人権を切り捨てる政治リーダーたち
(2)学校の現場から:“昔の情報で教えています。”
(3)グローバリズム論の研究(1)
(4)ニュース:地球村便り
(5)感想と質問(Q&A)

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┃▼┃(1)規模の経済への誘惑によって、人権を切り捨てる政治リーダーたち

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いまが歴史の転換期である、と自覚する人たちが日々増えている。人間が自分で創り上げたテクノロジーを磨くことによって、自分自身をほろぼしてしまうかもしれないという予感を持つ人も増えてきている。

歴史の転換期に必要なことは、過去の集積である現在の「総点検」と、理想に近い人間の未来を設定し、そこから現在を見てどういう「新しいシステム」を考案すればいいか、知恵を集めて考えることだろう。少なくともこれを行える自由がある社会を確保することだけは、なんとしてでも守らなければならない。

ところが、中国に習近平国家主席が誕生して「一帯一路」建設という巨大中華文明圏構築を開始し、このためにアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立にあたって加盟を呼びかけると、最終的には100ケ国以上が参加することになった。今年5月に北京で開かれた「一帯一路」の国際会議には130ケ国以上の代表が参加し、中国は約14兆円の援助を表明したという。自国の経済の発展を第一に考える政治家リーダーがいかに多いかがあらわになった。

第3次世界大戦をおこせば人類が滅ぶかもしれない地点まで来て、理想に近い人間の未来を全員で考えそれに向かって地球に住む全員が「新しいシステム」を考えなければならない時に、経済の発展だけを考え(つまりお金に目がくらんで)とんでもない「システム」に巻き込まれる選択をしてしまった。人間が自由に考え、幸福を追求する機会を奪われてしまうシステムだ。

大きな変化が起きている。ASEAN10ケ国は共同体になったところで南シナ海を自国の領土にくわえつつある中国に抵抗するのをあきらめ、中国資本と労働力を受け入れて「一帯一路」の東南アジア地区に変容しはじめている。ASEAN設立時とは真逆の着地点だ。ASEAN諸国がどの国から武器を購入し始めたかを知れば、この大木の幹がポキッと折れるような大きな変化がみてとれる。歴史的にみて最悪の時に米国に内向きの大統領が生まれてしまった。米国に頼れないために中国に抵抗するのをあきらめ、巨大中華文明圏にとりこまれていく。

一方、中国国内ではこれまでにない人権の抑圧や自由の締め付けがなされている。
返還後50年間は“一国二制度”が許される約束だった香港も20年目の今年すでに中国政府の支配下に置かれてしまった。そんな時、中国の独裁政権を批判して半生拘束されていたノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏ががんで亡くなったため、私たちはあらためて中国という国の恐ろしさに気づかされた。国家基本問題研究所理事長の櫻井よしこ氏が[週刊新潮]に連載中の“日本ルネッサンス”で暗示しているように、拘束中の人間を意図的にがんにかからせて都合のいい時に殺すのは、もはや隠せない事実になっているからである。

こういう状況を知っても主要国の政治リーダーたちは、批判すれば倍返しする中国を恐れて人権問題に触れないようにしていることにも気づかされた。これは非常に危険な状況である。主要国の政治リーダーたちはいまや大変劣化し、自国民を大量殺戮したり、拘束・拷問したり、飢えで苦しめたり、大ウソを言ったりしているので、中国の人権抑圧を非難する立場にないのが本当の理由であるかもしれないが。

この現実に気づいてほしい理由は、いま日本人をみまわすと日本が中国の属国になる可能性についてまったく「ありえない」と考える人、中華文明圏の「一部になって生きてもいいのではないか」と考える人など驚くほど楽観的な人たちが多いからだ。米国や連合王国、ロシアやイスラエルなどにある国家の安全保障に関するシンクタンクの多くやUKのエコノミスト誌などでは、あらゆる手段を用いてデータ・情報を集めプロが分析し、未来について“ありうる”いくつかのシナリオを作成する。次号では日中関係の将来についていくつかの“ありうる”シナリオをえがき、人権問題を無視する劣化したリーダーたちによって世界がどのように取り返しがつかないことになりうるかを、考えてみたい。

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┃▼┃(2)学校の現場から:“昔の情報で教えています。”

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ある私立高校で海外に語学研修に出かける1年生20人に<地球村>の後半を教えることになった。たいていは認定講師が教えるのだが、訪問先が中東の2ケ国でこれも含めてほしいという要望だったので、暑い中を私が教えに出かけた。

20人全員がスピーチの準備をしていて、それには感心した。が、スピーチがはじまると6人はグローバルな問題とは全く関係がないテーマを選んでいたし、TPPを取り上げた生徒は米国の離脱にさえ触れなかった。最後に現在まだ続いている戦争の話になったら、誰一人シリア内戦について知らなかったので、ほんとうに
ショックを受けた。信じていた子どもが長い間自分にうそをついていた、とわかった時のような驚愕だった。

すでに6年以上続き、宗教的、民族的対立が複雑すぎて泥沼化しているこの戦争。
大国の代理戦争のようになっている。どんな理由であれ、アサド政権は自国民を30万人も殺し、人口の半分である1170万人以上が国の内外にのがれ、大量の難民が発生した。破壊しつくされた街の写真を見るにつれ、ただその国に生まれ生活していたというだけで地獄の日々を過ごすことになった人々を忘れることができない。やっとのことでヨーロッパに向けて自国をのがれても、地中海でおぼれ死んでしまったり、なんとか行き着いた異国でも冷たくあしらわれ、結果的に他国に多くの問題を引き起こすことになった人々。

今世紀最大の悲劇のひとつであるこのシリア内戦や難民のことを、6年間生徒に話すこともなかったとしたら、その先生はほんとうに(社会科の)先生なのだろうか? いったい何を話しているのだろう。 生徒たちは礼儀正しかった。礼儀正しくするようにしつけられていた。ただ、昔のことを習っていて、世界でいま起きていることに関心がないだけだ。こんなことが多くの学校で起きているのだ。

偶然同じ週に、他の私立の中高一貫校の理事長にお招きを受けた。この学校では理事長、副理事長ともに大企業の出身であるという。理事長はかなり怒っておられた。「教員はまるでアマゾン河上流の密林に住んでいる裸の原住民のようだ。
昔習ったことを毎年教え、世界の変化から隔絶されている」と。 密林の原住民にたとえられた教員たちもちょっと気の毒だが、自己を客観的にとらえ衝撃を受けないと、私たちは変わることができない。だからこういう現実世界とつながった、手きびしい理事長がもっと増えてほしい。

国際理解教育を受けた20世紀型教員が、猛スピードで変化し続ける21世紀のただなかに10年後に出ていく生徒たちを対象に昔の情報で過去のことを教えている。この異様な光景をいずれにしても早く変える必要がある。

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┃▼┃(3)グローバリズム論の研究(1)

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英国のEU離脱宣言や米国における保護主義大統領の誕生を機に、グローバリズムの終焉とか、グローバリズムの負の側面を強調する本や記事がおびただしく出版されている。

これを次のような重要な点を踏まえ、世界の状況をじっくり観察して、何が正しい見方なのか、検証していきたい。

重要な点とは
(1)グローバリズム(Globalism)とは、国境が消えて世界が一つになるのを好ましいと考え、それにそった行動を主張する「超国家主義」である。そういう人たちをグローバリスト(Globalist)「超国家主義者」 と呼ぶ。
(2)私たちは、日本(民族)固有の価値と世界全体としっかり向き合いつながる価値とのマトリックス(対立2軸のバランス)を重視し、伝統を活かしながら世界に貢献し、世界が正しい方向に向かうことを望む、グローバル人財の育成を目指す。私たちはしたがってグローバル化を肯定するが、グローバリストではない。
(3)冷戦体制崩壊後、90年代に世界の仕組みが猛スピードで変わり、人々の価値観も2000年頃には180度転換した。そして21世紀に急速に強まったグローバルな力は、つぎの5つが合わさったもの。うち1つは冷戦体制崩壊以前からずっと続いている。

1.急速に発達し、すべてをネットワーク化し、地球そのものをディジタル生態系化し始めたIT
2.グローバル企業群
3.国際金融資本中心のグローバリズム
4.巨大自由貿易圏 (EU ,NAFTA, AEC など)
5.中国による、彼らの価値観に基づく中華大帝国の構築

手初めに、中野剛志、柴山桂太両氏の対談『グローバリズム その先の悲劇に備えよ』(集英社新書)を次号で取り上げたい。

この本についての論評など、みなさんのご参加を歓迎します。

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┃▼┃(4)ニュース:地球村便り

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●7月14日(金)駒込学園高等学校で、国際教養科の生徒30名を対象に開催された<地球村>プログラムを経済産業省の大臣官房参事官が視察。
「駒込学園は天台宗の流れをくむ伝統ある精神にICTやグローバル教育など時代の先端を行く学びを取りいれ、本格教育を行っている」と河合校長先生。
●7月28日(金)5月26日に議員会館で開催した講演会の司会者石塚隆正氏が都政新聞社主催の勉強会で、渥美育子の「21世紀型人財をどう育てるか?」を中心にご自分の教育論をまじえ、わかりやすく講演。
●8月5,6日(土・日)倫理研究所 生涯局の小池伸悟講師が、大阪で初めての<地球村>セッションを開催。
●文科省の官民協働プロジェクト「トビタテ! 留学 Japan] の留学帰国生を対象に9月2日から来年3月まで<地球村>を開催する。担当は本多宏江講師。
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┃▼┃(5)感想と質問(Q&A)

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【質問】

渥美先生

先生の文化論に関連して以下質問させてください。
1.先生は1990年代後半から世界は、グローバリズムに動き出した。それに対して、日本は遅れをとったことが失われた25年間の本質、と主張されておられます。その通りだと思います。
更に、2013、14年ごろから、より高い次元のグローバリズムに世界は進んでいる。その例証として中国の一帯一路と量子衛星及び、ドイツを発祥とするインダストリー4.0をあげておられます。これもその通りと思います。
そこで伺いたいのは、16年、17年にかけての世界の動きをどう見ておられますか?
英国のEU離脱、トランプ大統領の出現を見ると、米英アングロサクソンが推進してきた資本主義、グローバル主義はゆっくりと自壊に向かいつつあるように見えます。
このことをどう見ておられますか?
そもそもこの見立てが間違いとお考えでしょうか?それともこの見立ては間違っていないが、だからと言って、長年かけて培われてきたリーガルコードが弱体化しているわけではなく、むしろ、リーガルコードが強く生きている結果が現在の政治状況、経済状況を生み出しているとみるべきだとお考えでしょうか?お考えお聞かせください。
2.なぜこのような質問をしているかと言いますと、先生は、世界の競争に打ち勝つために、日本はもっとリーガルコードを強める必要がある、とおっしゃいます。私もその通りだと思います。他方で、英米流グローバリズムがゆっくり自壊に向かって進んでいるとすれば、果たして英米流リーガルコードを身につけることが 長期的に見て日本の武器になるのかという素朴な疑問を抱くからです。とりわけ、リーガルコードとは別の価値観で国力を高め。覇権を目指す中国を念頭に置くと、押し負けつつあるリーガルコード陣営の要素を強めていくことが決め手になるのだろうか?という疑問です。
私にも答えがあるわけではなく、先生の主張が日本を良くする提言であることを十分に認めたうえで、20年程度の未来以降を考えた場合の決め手を模索する知的思考実験として受け止めて思うところをご教示いただけたら幸いです。

田中栄一(NTTコミュニケーションズ(株)常務取締役)
【回答】

田中さま

ご質問をいただき、ありがとうございます。

冷戦体制崩壊以降、それまで長年かけて築かれてきた民族国家、国民国家の枠を超えるグローバルな力が急に強まったのですが、その力を分析しますと今号(3)の(3)に記しました5つの力が合わさっていることがわかります。このうち国際金融資本中心のグローバリズムははるか以前から続いてきたものですし、中国による中華大帝国の構築は異質のもの。冷戦体制崩壊のきっかけとなったのは英米ですが、グローバリズムの弱体化とか終焉とか言われているのは力をもってきたグローバル企業と巨大自由貿易圏の中のEUに関連したことです。それも全く予期せぬ2つのできごと、(1)ISの出現とテロの拡散、(2)主としてシリア内戦の結果生まれた多くの難民というグローバル化の負の側面がおきたため、国の主権対グローバルな力の拮抗が強くなった。現実にはトランプ大統領を受け入れない人々も多いし、BREXITに反対する人も多い。EUも持ち直すかもしれない。つ
まり急速で強烈なグローバル化がバランスをとるためちょっと国の枠組のほうに揺れ戻ったのだとみなしたいのです。(そしてまた少し揺れ返しています。)

しかし、そこに乗じて、歴史をひっくり返すようなことが起きてきた。それはご指摘のように、中国が私たち自由主義諸国の普遍的な価値(自由、人権、国際法を含む法の支配など)とは全く異なる”主権在党”の支配と軍拡で現代の「モンゴル帝国」ともいうべき巨大中華圏の構築を始めたことです。多くの人はまだ気づいていないかもしれませんが、これはユーラシア大陸をはるかに超え、世界の陸と海、宇宙の制覇も含めたスーパーグローバル化に行きつく恐れが現実のものとなってきています。グローバリズムの終焉どころか、異形のグローバリズムによる世界制覇にほかなりません。

中国の価値観とやりかたによる巨大中華圏の構築と戦うには、どのような武器があるでしょうか? 私たちは”主権在党”では生きていけませんから、ソフトパワ―としては普遍的な価値を守る国際法をふくむ“法の力”、つまりリーガルコード、国家資本主義に対する公益資本主義、すくなくとも中国と同じレベルのテク
ノロジー(特に量子力学や生命医療関係)、ハードパワーとしては抑止としての核武装でしょう。中国はいまの国際法を紙クズだと言っていますが、リーガルコードはキリスト教新教や広く宗教倫理に根を下ろしている、国民国家、民族国家の土台をなす価値です。特に日本人はこれに精通する必要があると言っているのです。

欧米のグローバリズムの終焉を声高に叫ぶよりも、いかにして今持っているものをつかって“異形のグローバリズムによる世界制覇”と戦うか、知恵を絞ることが重要であり、この現実としっかり向き合い、知恵を出せる人財を育てることが喫緊の要請だと思いませんか。
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●ご意見・ご感想をお聞かせください。
(3)グローバリズムの研究(1)で取り上げる本についての、論評もあわせて募集し
ています。 gmp@global-kyoiku.net

●勉強会のご案内(8~11月)敬称略

▽8月は休みます。

▽9月12日(火) No.8
〔講師〕坪田幹人 (株式会社 日立システムズ)
〔タイトル〕安部芳裕『金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った』5次元
文庫 2008)を読む

▽10月20日(金) No.9
「講師」渥美育子 (一社 グローバル教育研究所 理事長)
「タイトル」グローバルインテリジェンスをどうつくるか?

▽11月22日(水) No.10
「講師」田中栄一 (NTTコミュニケーションズ(株) 常務取締役)
「タイトル」ビル・エモット『「西洋」の終わり~世界の繁栄を取り戻すために』
(日本経済新聞出版 2017)を読む

会場:東京都港区南麻布4-5-48、フォーサイト南麻布5F(メトロ日比谷線広尾駅
1番出口徒歩5分)03-6869-6912)

参加ご希望の方は、次のURLをクリックしてください

『グローバル教育の深掘り勉強会』スケジュール 2017年1月~4月

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「和のこころが世界を照らすグローバルマインドプロジェクト」

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