2017年9月5日

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┃■┃■┃ 渥美育子オフィシャルメールマガジン  No.8    ┃■┃■┃

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みなさん、こんにちは。

とてもショックでした。わかっていたのですが、同じ日本人が、日本の運命を左右するような決定に際して、いつも意見が賛否まっぷたつにわかれてしまうとは。日本を仮想敵国とみなす国にとっては、こういう一国における深刻な意見の対立は、まさに高笑いなのでしょうが。

やはり遅くとも中3くらいから世界全体を知る、ものごとにはうらとおもてがあると知る、時代の原理・原則を学ぶ、と言ったほんもののグローバル教育が必要です。毎日、身に染みてそう思います。断片的知識を持つような教育を受けた人が、ほんのわずかの情報で固定観念を持ってしまうのは、いまのように明日世界で何が起きるかわからない流動的な時代には致命的です。意見がいつも真っ二つに割れていると、国がまひしてしまいます。

島国に生まれ、教育を受け、世界全体としっかりむきあうことなく社会にでてしまうと、視力がとても弱いのが常態になってしまいます。子どものための『孫子の兵法』が大人気のようですが、『論語』を読んで人格者になろうというようなもの、中国の現政権が普遍的な価値を大学で教えることを禁止し、民主主義を望む人間を拷問し、いまこの瞬間に日本自体に情報戦を仕掛けて“戦わずに自国の領土にしよう”としている現実が全く見えない人間になってしまうからです。

8月に人類史における「三戦について」本を書かれた上之門捷二氏にお会いしました。彼はこの本で「日本人は異民族に支配される経験がなかったため、中国人のように”政治とは流血を伴わない戦争であり、戦争とは流血を伴う政治である”と言った冷酷な現実認識がDNAに刷り込まれている中国人とちがう。
まるで免疫力がない。」と喝破されています。免疫力をつけるため、全く異なる見解も研究する必要があります。

そこで今回は、

(1)中国”一帯一路”:日本にとっての2つのシナリオ
(2)学校の現場から:「日本の学校は変化している」という安心
(3)グローバリズム論の研究(2)中野剛志&柴山桂太対談『グローバリズム
その先の悲劇に備えよ』集英社新書 2017
(4)ニュース:
●『世界で戦える人財の条件』英訳本の出版
(5)感想と質問(Q&A):フィリピンから
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┃▼┃(1)中国”一帯一路”:日本にとっての2つのシナリオ

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5月の講演で明らかにしたように、中国の習近平政権が推し進める“一帯一路”構想は、現代にモンゴル帝国を打ち立てるような歴史的な大事件である。しかも今回は宇宙と地球を結ぶ監視網が整備され、アフリカや南米にも及ぶITのネットワークでシステム化していくので、遊牧民であったジンギスカーン親子・一族のように3代で分裂し力を失うことはないだろう。

2001年6月、中国、ロシアに中央アジア4ケ国を加えた国々が軍事同盟を含む上海協力機構を設立した時、真の目的は何なのかと思ったが、9月米国で起きた同時多発テロ事件に目をうばわれてしまった。ところが2013年習近平が国家主席になると、“一帯一路”構想を提唱、あらゆる面で国の力を誇示し始めた。

この時から情報を集め、分析。中国が巨大中華文明圏を構築する可能性をいち早く察知した。櫻井よしこ氏のこの件についての洞察と警告には、いつも勇気づけられた。今年になって「産経新聞」の<正論>欄でやっと“事実”がはっきり書かれることになった。山田吉彦東海大学教授の論文である。

いま日本には、「一帯一路にはやく日本も加わって、中国と仲良くしていこう」と言う総合商社系、ビジネス系の人たちと、櫻井氏の国家基本問題研究所系や私のように人道的で社会貢献派で自由主義世界の価値観を死守したい「中国の力による支配絶対反対派」がいる。

まず、“一帯一路”の現実を知り、2つの正反対の主張を聞き、第3の道はないかを考えたい。

(1)“一帯一路”の現実:

陸の道も海の道も、すべての道は中国に通じるとは「中華思想」を表し、“漢民族の偉大な復興”をかかげる習近平国家主席が共産党の価値観をベースに巨大中華文明圏を築こうとしているのは明らかだ。14年11月に北京で開かれた「アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議」で、各国にアッピールした。

“一帯一路”はユーラシアを突っ切る「シルクロード経済帯」(一帯)と南シナ海-インド―アフリカから欧州に至る「21世紀海上シルクロード」(一路)からなる。シルクロードという命名が中世から何百年間にわたるユーラシア大陸での様々な地域の商人たちの交易活動という、経済・ビジネス活動をほうふつとさせる。彼の大構想はネーミングのうまさゆえに、一層魅力あるものに響く。

“一帯一路”の表の顔は鉄道、高速道路、港湾などのインフラ整備をおこなうことで一大経済圏をつくりあげることである。これを実現するため2015年に中国主導でアジアインフラ投資銀行(AIIB)が発足、次々に参加国が増え、今年5月に北京で開かれた国際会議には29ケ国の首脳、70の国際機関代表、130ケ国の代表が参加したことは知られている。席上、習近平は多くの増資や援助を約束した。

このインフラ整備にあたって、多くの問題が発生している。経済的に行き詰まったギリシャのピレウス港を中国が35年リース、中国からの巨大支援を受け、結局ハンバントタ港の権益の80%を中国に売ることになったスリランカ、自国の港湾開発事業を中国からの労働者にうばわれてしまうASEAN諸国の人々、高速道路建設ルートで摩擦を起こす中国とインド。

そんな中で、“一帯一路”の裏の顔が徐々に明らかになってきた。中国の軍事網の建設だ。海上シルクロードの出発点である南シナ海に人工島を作り軍事化したりジプチに軍事基地を建設したりといった非常に目的が明白な例だけではなく、要所要所の港湾の建設や中国仕様の鉄道網もつないでみると、中国の意図がよくわかる。それだけではない。中国は2020年までに自国の衛星測位ナビゲーションシステム「北斗」だけで全地球をカバーできるようになる。“一帯一路”でつながる人たちは「北斗」の影響下に置かれる。

(2)「中国と友好関係を持ち、中国とともに進め]というシナリオ

これまで努力して中国とのビジネスを担い発展させてきた、というビジネス関係の人たち、とりわけ商社の人たちにこの考えを持つ人が多い。(彼らのビジネス経験はほとんどが習近平政権以前のものであるが。)日中友好関係協会など、友好をかかげる団体や外交官もこのシナリオの信奉者である。

理由は、米国との約束を破って真っ先にアジアインフラ投資銀行のメンバーとなった連合王国(UK)をはじめ、“一帯一路”を大きなビジネスチャンスとみなし、なだれを打つようにメンバー入りした(米国・日本以外の)主要国と同じ。冷戦体制崩壊後の多極化時代に、地政学者やそれに準じる政治家が「ユーラシアを制
する者が世界を制する」と言ったことに賛同し、新しい世界の覇権者である中国といっしょにビジネスをして勝ち組みになればよい、と考える人たちである。

日本人で中国派である人の中には、気に障るとすぐに復讐する厄介なお隣りさんだからこそ、何とか仲良くやっていきたいと考える人も多いと思われる。米国の新しい大統領が気まぐれで、いざという時力を行使してくれないだろうから、南シナ海に人工島を作って軍事化したことには目をつむり、“一帯一路”に加わって経済的な繁栄にあずかるほうが利口だと態度を変えたASEAN諸国の政治家たちと同じである。

また、このシナリオを選ぶ人たちは、一党独裁政権はいつか必ず崩壊する、中国が日本を属国化できるわけがない、と本当に信じている。元中国大使で伊藤忠商事名誉理事、日本中国友好協会会長でもある丹羽宇一郎氏は、建国100周年の2049年に中国の独裁体制は崩れ、中国は連邦制になり分権化すると予言している。
(『習近平は一体何を考えているのか』PHP新書、2016)だから日本は中国の傘下で仲よくして生きればよいと言って、ケント・ギルバートを激怒させ、あきれさせた。
(3)「人権無視の中国とは一線を画し、自由諸国の価値を死守せよ」というシナ
リオ

反対にこの考えの持ち主は、世界のニュースを積極的に集め分析し、経験よりも歴史から学び、自由と民主主義をこよなく愛し、日本の国体を崇敬する、安全保障重視のインテリジェンスクリエーターたちである。地政学者も多い。

ケント・ギルバートが『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社α新書、2017)で明言している通り、中国人は歴史的に中国こそが世界はおろか宇宙の中心であり、世の中に存在するすべては中国皇帝のものであると考える“信じがたい”民族である。そして今タイミング悪く、習近平が皇帝になる野望をあからさまにしているのだ。中国を逃れ日本に帰化した石平も『なぜ中国は覇権の妄想をやめられないのか』や 『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(いずれもPHP新書)など一連の本で同じことを強調し、日本人よ目を覚ませ、こういう民族とは関わらないようにする方法を考えよと言っている。

中国が日本を侵略するはずがないとはとんでもない甘い考えだ。現在中国の領土にされているチベット、モンゴル、新疆ウィグル自治区がどのように大量虐殺、粛清、蹂躙、強制の結果中国に組み込まれたか、1冊のドキュメンタリ―でも読むがいい。台湾出身の黄文雄も中国の侵略の歴史、中国人の残虐性を繰り返し日本人に伝えている。『孫子の兵法』の受け売りなのか、戦わないで勝つのが一番理想的な勝ちかただ、などという人がいるが、武力を使わない情報戦をすでに中国は日本全国に仕掛けているのに気づかないだけだ。

中国の政治指導者たちが日本の政治リーダーの靖国神社参りを非難したり、日本軍による大戦中の残虐行為について国内外を問わず喧伝していた時、中国国内ではナチスによるユダヤ人大量虐殺に匹敵する”臓器狩り”が行われていた事実を知っているだろうか? 何万人の法輪功学習者が政府―病院―軍部のちからで臓器を摘出され外国人に売られるという、数十億ドル規模の利益のために犠牲にされていた事件。主権在党の国では金のため、出世や保身のためにどんな残虐行為も行われるという事実。それがわかれば、習近平国家主席が“皇帝”になる準備のために、現在どのように多くの人が自由や人権を非人間的手段でうばわれ、それが今後どのように一層強まるか、容易に予測できるはずだ。

“一帯一路”の大計画と一党独裁政権で可能な猛スピードの実践プロセスを調査すると、これが表はビジネスと経済圏の構築であるが、裏では周到な計画による軍事網の構築が一体となって進んでいることがわかる。さらにこれがアフリカや南米にも延び、幹線にそって中国の植民地のような町が世界のあちこちに突然建設されることになる。(日本の北海道釧路あたりが”一帯一路”の東の出発点になるとささやかれている)太平洋上の島々も中国の色に染まっていく。それだけではない。2020年には地球上全てをカバーする中国製の衛星測位ナビゲーションシステムを使って位置をはかり、遠隔操作し、監視されていくことになる。

今、中国が最も高揚し最大の尽力をしているのは、宇宙の支配である。欧米諸国の最先端の技術をサイバー攻撃で盗むと同時に、14億人のトップとなると桁外れに優秀な技術者がいるので彼らの能力を結集して2030年までに宇宙強国になり、2049年までに宇宙の制覇が完成するよう、周到な計画で動いているのだ。昨年8月に世界に先駆けて量子衛星を打ち上げるのに成功したことは、2007年に通信衛星を地上から爆破させる兵器を完成したことと合わせ、宇宙戦争を起こせば中国に勝ち目があるところまで来ていることを明白にした。宇宙開発は人民解放軍が受け持っている。

これでもまだ、中国が日本を属国にするようなことはありえないと言えるのだろうか? ビジネスだけを考え、“一帯一路”に参加しましょう、と安易に言っていいのだろうか?

(4)私たちは一刻も早く(2)と(3)、2つの正反対のシナリオを精査し、どうすれば一番よいか真剣に考え、討論する必要がある。

10月31日(火)17時から東京の衆議院第一議員会館でこのテーマで講演会を行い、世界の現状と日本の立ち位置をよく把握したうえで、第3のシナリオを探りたい。
みなさん、ぜひご参加ください。

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┃▼┃(2)学校の現場から:「日本の学校は変化している」という安心

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8月12日土曜日の夕方、池上彰氏の人気TV番組「ニュース、そうだったのか」で”あなたも知らない日本の学校の変化”、を取り上げていた。今春、文科省のかたとお話しした時、「学習指導要領が大きく変わります」と変化を頼もしく思っていられたことを思い出した。

みなさん、学校のどんなところが変わってきているか、すぐに答えられる?
(池上調)

●電子白板を使うようになった・・・・たしかに最近私が訪問した3つの私立 中高一貫校はみなそうだった。
●授業開始や終了のチャイムを取りやめた
●最初から討論できるように、机やいすをアイランド型に並べている

TVだから見える変化を先ず取り上げるのは仕方がないが、日本が20年遅れでグローバル、グローバルと言い始めてすでに7年。もう少し授業の“形”や“中身”の1つや2つが劇的に変わってもいいのではないか?

まず、各時限が50分とか60分の小さい箱に分けられているのが諸悪の根源だ。
これは日本から世界を窓ガラスの1枚1枚のように見たて、全部合わせたら世界全体だという”国際理解教育”の器そのものである。この小さく分けられた器にSpeed(時間軸)とScale(空間軸)から成るグローバルな世界をおしこめることはできない。F(器)= C(中身) であるとき学習は最高にダイナミックで統合された理解につながるという原理・原則を無視しているシステムだ。このような小さい箱に学習指導要領でこまかく決められた中味を押し込んで毎日教えていると、世界の動きの一番重要なことが目にも意識にも入ってこない視野狭窄症になってしまう。私なら1時限をいくつかつないだり、1日を自由に使ったりできるようにする。

次に時間軸、空間軸を使う。例えば生徒がいま15歳なら、10年後には世界がどのように変わっているか推定し、生徒たちが社会に出た時なにを知っていれば一番助かるか、どんな能力を持っていたら困らないか、あるいはいい仕事ができるか、そこに優先順位をおくように基礎から教えるようにするのが良い。
生徒がそんな環境におかれたら何に気づくか、表現してもらう。要するに、自分の子どもに教えるかのように、子どもにとって一番必要なことを教える。

一つ、追加でやってほしいことがある。何百年、何千年かけて形づくられてきた民族国家、国民国家固有の価値観というものがある。もし自分がその国に生まれていたら世界がどう見えるか、日本がどう見えるか、ときどきシミュレーションをおこなう。多文化のレンズを使えるようにするエクササイズだ。

子どもが世界を見る目が変わるとき、「学校は変わった」と言ってほしい。
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┃ ┃(3)グローバリズム論の研究(2):中野剛志&柴山桂太対談
┃▼┃ 『グローバリズム その先の悲劇に備えよ』集英社新書 2017
┃ ┃ 内容;カール・ポラニー『大転換』(1944) を冷戦体制崩壊後の世界に
┃ ┃ あてはめたグローバリズムの徹底否定
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京都大学派ともいうべき若い2人の経済評論家が、ハンガリー育ちの経済人類学者カール・ポラニーが第2次世界大戦中にだした大作『大転換』に大きな影響を受け、新市場主義やTPPは世界を戦争に導く、とグローバル化を徹底的に否定する対談。

なぜ、資本主義は異常であり、市場経済は危険なのか? ポラニーが主張したように、それまで経済的な仕組みは社会関係に「埋め込まれ」ていたのに、19世紀後半から20世紀初頭にかけての第1次グローバル化の時代に、それが後戻りできないほど破壊され、市場優位になってしまった。10年後におきた第2次世界大戦後は、社会保障制度や労働組合、国境を超える資本移動の規制などでせっかく市場をコントロールできていたのに、冷戦体制が崩壊すると過去の教訓を忘れ、市場経済がまるで経済成長には欠かせない条件だとでもいうように世界を覆ってしまった。政治と経済が分裂し、共同体に様々な分断が生じ破壊された。予測できたことだが、やはり保護主義のトランプ大統領が米国で生まれたり、英国でEU離脱が起き、グローバリズムは終焉した。グローバリズムは危険なのに、まるでこれからグローバルな時代がずっと続くかのように信じ,グローバル化によって打
ちのめされた人々の怒りに気づかないエリートたちは、大きなしっぺ返しを受ける、と警告する。

問題はトランプ大統領の誕生とブレグジットだけでグローバリズムの終焉と断定できるか、ということだ。グローバル化は今回5つの力が合わさって急速に進んだため、国民国家の枠組みの方に揺れ戻しが起きただけではないか?、歴史を50年、100年の単位でみると、グローバル時代の特徴は国家という枠組みとそれを超えようとするグローバルな力のマトリックスで進むと私はみる。だから、終焉というのは短絡した見方で、グローバル化はこれからも続くと思う。

対談者双方とも主要国の経済学者や彼らの主張について大変博識だし、EUの失敗の理由など共感、納得できる分析が多くみられる。しかし、ポラニー論を100%信じて現代に当てはめ診断しようとするあまり、日本に反グローバルの政治の嵐が吹かないのはおかしいといった疑問には違和感を感じる。日本は先進国の中でグローバル化が20年も遅れた唯一の国だ。今こそ第4次産業革命に伍していくためにも、正しいグローバル化にまい進すべき時である。

この対談は、すべてを経済学の角度から見ているので、「あなたの日本人としての価値の軸は何なのか?」、と問いたくなる。例えば、TPP亡国論を主張しているが、TPPは経済の話しだけではない。世界制覇をめざして巨大中華文明圏を構築するためアジアを支配しようとしている中国に対抗して自由主義諸国の価値観でルールを設定し、標準化したいという意図も大きかった。トランプ大統領が就任と同時にTPP離脱を表明したため、ASEANその他のアジア諸国が中国の影響下に自らをおき、結果、日本が一層危険になってきているのに対して、責任をとれるのだろうか?
また、グローバル化の動きは島国に住み平和ボケしている日本人が世界全体に目を向け、新しい時代の動きを包括的にとらえられるようになるというプラス面も大いにあるのではないか?

結局のところグローバル化やグローバリズムの定義をもう一度はっきりさせること、グローバル時代には最大の時間軸、空間軸を使って世界全体の情勢を捉え、日本にとっての価値の軸をしっかり持つことが重要だという、グローバル教育の方程式を再確認する刺激を大いに与えられる本であることは間違いない。

追記:8月31日の「日経新聞」にEUが日本との経済連携協定の大枠合意を弾みにメキシコとのFTA再交渉、南米4ケ国が作る関税同盟メルコスル、アジア・太平洋地域ではオーストラリア、ニュージランドとのFTA交渉などに入り、米保護主義に包囲網をかけているという記事が載った。TPP11やRCEPの交渉も今年行われる予定で、グローバリズムは終焉どころか、スピードあげて進んでいるように見える。

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┃▼┃(4)ニュース:
┃ ┃  ●『世界で戦える人材の条件』英訳本の出版
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●『Developing Global Talent–Competing against the best in the world』 (Babel Press,USA) (『世界で戦える人材の条件』(PHP ビジネス新書)の 英訳)が出版され、Amazon.com、Amazon Co.Jpで販売中。
翻訳者Mandi Haase, 監訳Laura Cocora,Ph.D。$22.00
昨秋出版された韓国語訳に続く。

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┃▼┃(5)感想と質問(Q&A)フィリピンから

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渥美育子先生、

現在、JICA教師海外派遣プログラムでフィリピンにおります。
7日目となりました。あと4日間です。
実際に、文化や宗教、価値観の違う人と触れることで様々なことを感じています。

[1]
フィリピンの経済発展の足かせになっていることは
「汚職」と「女性の避妊禁止」にあるのでは、と感じました。
その背景にあるのが、宗教観です。
汚職については、だいぶ前から問題になっているようですが「法律」に対する考え方が弱いように感じました。
また、女性の地位は、他国より高いと言われているにもかかわらず教会では、避妊は「悪」と教えられる。なおかつ、人々は教会に頻繁に通う文化がある。
これが、カトリックの現状なのだと思いました。
逆に、宗教革命で、カトリックに見切りを付けた人達がプロテスタントとして、法律を重視する宗教観を作り上げていったことが納得できました。

[2]
カトリックの宗教観は、すべてが神によるものと言うことでした。
例えば、物事が上手くいった時には、神に感謝すると言います。また、それをサポートしてくれた他者に。
なぜか、自分の努力で物事を成し遂げた、とは考えないと言うのです。(JICA隊員談)
そのため、何かに向かって、物事をじっくり考え、改善し、努力するという行動パターンがなかなか理解してもらえない、とも。でも、逆に、その考えは、台風ヨランダの被害を受け、以前の暮らしより貧しい暮らし(仮設小屋にすむことになっている人)をしているおばあさんが「いま、雨風をしのげる生活ができることに感謝している」という超ポジティブな考え方につながっている、ようにも思える。

[3]
よって、モラルコード、リーガルコード、レリジャスコードのバランスを考える必要性を改めて認識しました。

[4]
次は、歴史観についてです。
日本とフィリピンとは、戦後の「和解のモデル」と言われていることを今回、初めて知りました。
和解と忘却――戦争の記憶をめぐる日本・フィリピン関係の光と影<http://www.ne.jp/asahi/stnakano/welcome/> 中野 聡(一橋大学大学院社会学研究科)という文章をJICAフィリピンの次長さんから紹介され、お互いの交流を未来永劫、続けていこうとする態度が必要なのだと思いました。

[5]
グローバル教育ということについて、考えさせられる日々です。
JICAは「開発教育」という立場を取っています。
事前研修で「生徒の生き方が変わるグローバル教育の実践」の著者・石森広美氏から講義を受ける機会がありました。
氏の主張は「世界にある大きな課題を感じても、行動しなければ意味がない。行動しようとした時、遠くにある世界を変える前に、今目の前にある事象を変える変える行動を起こすことが必要」という主張でした。渥美先生のお考えに少し近い方だと認識しております。
また、石森先生の勤務する宮城二華高校は、スパーグローバルスクールの認定を受け、予算が付き、グローバルリーダーを育成するための予算もついているとのことで、実践も、ディスカッション中心とのことでした。
高校では、「探究課」の新設が模索されている状況で、こうしたモデルとなる実践が広がっていく感じがします。しかし、それでは少し遅いような気がします。
そのため、こうした実践の中学校版を構成する必要感を改めて感じました。
また、英語教育の早期実施の必要性です。

[6]
今回の研修で、結局、通訳を交えてしか意思の疎通ができない日本人の姿をまざまざと見せつけられた思いです。
現地では、小学校3・4年生頃から英語が話せるようになっていました。実際には、英語力がその後の人生の成功を大きく左右するようでした。その時期が、ちょうど5・6年生の時期で、その時期は、女性の方が早く発達する上に勤勉性も女性の方が高いために、女性のリーダーが多くなるように感じる、とJICA隊員の方が私見ではあるが、と前置きをした上で話してくれました。
結局、日本は、この時期に何もしていないので、世界との差は開くばかりと思いました。

[7]
今、フィリピンは、「K to + 12」という教育政策をスタートし、小学校からすぐに高校という接続だったのを、間に中学を入れ、世界の教育システムと同じレベルに引き上げました。
日本も、そうした時期にさしかかっているのではないだろうか、と強く感じた次第です。

[8]
グローバルリーダーの存在を知る。
2013年に台風ヨランダの被害を受け、その後、被害の最も大きかったタクロバンの街を復興させた町長さんの話しを聞くことができました。彼は、自分が町長として献身的に復興対策にあたったことを「町民の父親という立場にある私にとっては、あたり前のことをしているだけ」と話し、人々の中に、リーダーを育て、復興を「自分事」として捉え、街全体で復興に取り組んだ経緯を話してくれました。
「なぜ、彼がそれほどまでの強いリーダーシップを持ちえたのか」バックボーンについて質問しました。
その答えは、
「もともとは日本の『PNG』という会社のアジアを統括するリーダーだった。
それで、シンガポールの支社で働いていた。そのなかで、シンガポールも昔は貧しい国だったが、今は反映している。自分の生まれ故郷のタクロバンも、同じように街をよくしたい、だから、それまでのキャリアを捨てて、町長に立候補した。自分のこれまで身につけたスキルを街のために使いたい」

というものでした。

そうして、町長になった4ヶ月後に、台風ヨランダの被害を受けています。でも、ピンチをチャンスにかえ、街は見事に復興していっています。そうしたグローバルリーダーの姿を日本の中学生に伝えていく必要があると感じました。

[9]
話しにまとまりがなく、大変申し訳ありません。
フィリピンの研修を通して感じたことを羅列してしまいました。ただ、中国に関しては、国家間というより若い世代、つまり生徒の世代で交流を通して、中国の子ども達が学校教育で教えられていることが全て正しいわけではないことを理解し合う機会が必要なのではないだろうか、というのが私の今の考えです。
国家間では、どうしようもない状況まで来ています。ならば、中学生や高校生の時代に、お互いの国の生徒が交流する機会を作り、共に過ごす時間をつくり、お互いの国を理解するチャンスが広がるような取り組みをする必要性を感じました。
以前、高校生同士が交流をして、お互いの認識には誤解があるということを日本の高校生と中国の高校生がそれぞれ感じたというニュースを見たことがありましたがそうした機会を、日本の大人達がもっと深く知り、その機会をつくるために自分にできることを行動に変えていく必要があると思いました。

山口俊一(山形市立山寺中学校教員)
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gmp@global-kyoiku.net

●勉強会のご案内(9月~12月)敬称略

▽9月12日(火) No.8
〔講師〕坪田幹人 (株式会社 日立システムズ)
〔タイトル〕安部芳裕『金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った』5次元
文庫 2008)を読む

▽10月20日(金) No.9
〔講師〕渥美育子 (一社 グローバル教育研究所 理事長)
〔タイトル〕グローバルインテリジェンスをどうつくるか?

▽11月22日(水) No.10
〔講師〕田中栄一 (NTTコミュニケーションズ(株) 常務取締役)
〔タイトル〕ビル・エモット『「西洋」の終わり~世界の繁栄を取り戻すために』
(日本経済新聞出版 2017)を読む

▽12月19日(火)No.11
〔講師〕上之門捷二 ((株)スキルパートナー監査役
〔タイトル〕人類史における三戦について;世論戦、心理戦、法律戦
会場:東京都港区南麻布4-5-48 フォーサイト南麻布5F
(メトロ日比谷線広尾駅 1番出口徒歩5分)03-6869-6912)

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