FORBES JAPAN 2021 渥美育子インタビュー

【「天球アバカス(そろばん)」で「日本発の世界共通グローバル教育」の発信をめざそう!】「FORBES JAPAN 2021」インタビュー記事を公開します。

Forbes2021

タイトル:「天球アバカス(そろばん)」で「日本発の世界共通グローバル教育」の発信をめざそう!

21世紀を迎えた今、人類は世界共通の「時間軸」「空間軸」「価値軸」で世界、さらには地球を見通す必要に迫られている。「そんな時期だからこそ、中庸の精神を資質とする日本のDNAを活かした、日本発「グローバル人材育成プログラム」や「ビジネスモデル」を世界に向けて発信していかなければならないと思っているんです。」と熱く語るのは「世界で戦える人材の条件」の著者、渥美育子氏。そんな彼女に「日本発21世紀、真のグローバル人材育成」について語ってもらうことにする。

 

― 渥美さんは1980年、ハーバード大学研究員としてアメリカに渡り、2年間の研究終了後ボストン郊外で「異文化マネジメント」を提供する研修会社を立ち上げていらっしゃいますが、起業家として会社を立ち上げることになったきっかけや、その当時のご自分の思いについて、少しお話しを伺いたいと思います。

渥美育子(以下、渥美):日本支社の社長として東京に赴任する大企業幹部の特訓を依頼されたことをきっかけに、当時ハイテク企業が密集していたボストン郊外の「ルート128」と呼ばれる地域にある大企業や、ベンチャー企業の重役たちとお話をする機会が徐々に増えてきました。でも、話をすればするほど「ほとんどの人たちがあまりにも自国中心のものの考え方に拘っていること」に驚きを隠せませんでした。そして、私はその人たちの潜在意識の中に「文化のメガネ」があることを強く感じたんです。同じ資本主義社会であっても、どんな文化のメガネをかけるかによって、世界は異なって見えますし、マネジメントの方法も変わってくるはずです。ですから、文化の多様性を理解できなければ、世界という舞台でグローバルビジネスを展開して行くことはできないわけです。そこで直感的にビジネスチャンスを感じた私は無謀にも「異文化マネジメント」を提供する研修会社を立ち上げようと思い立ったというわけです。今思えば、それはソ連が崩壊し、本格的なグローバル化が始まる10年ほど前のことでした。

 

― その頃はまだ日本人女性がアメリカで起業することは珍しい時代だったと思いますが、「デュポン」「IBM」「ユナイテッド・テクノロジーズ・コーポレーション(UTC)」といった米国の大企業を顧客にして、米国のみならず世界中を駆け回るようなビジネスに発展させたと伺っています。その成功の背景について

お話しいただけますか?

渥美:企業としてスタートしたからには、とにかく新規の顧客開拓をしていかなければならない。そしてある日ボストンの下町に足を運んだとき、無料情報誌のイベントページが目に留まった私は、ふとそのフリー誌にイベント案内を出して見ようと思いついたんです。そして、どうせやるならアメリカ人(企業)が関心を持ちそうなものが良いと考え、「日本セミナーシリーズ~相撲と日本の意思決定システム~米国とどう違うか徹底討論」というテーマを掲げたセミナーを試験的に開催してみました。さらにその後も日本の芸術やスポーツと経営を組み合わせたテーマを下に、続編セミナーを開催して行くうちに、その評判を耳にしたというタイム誌の記者から突然取材依頼の電話が入り、1985年春「重役室の禅」というタイトルの記事が紹介されることになったのですが、その反響は驚くべきものでした。今思えば、「外国とビジネスをする際に生じる様々な問題を、文化まで掘り下げて解決しようとする異文化マネジメントの必要性があったにも関わらず、そういうサービスを提供する会社が存在していなかった」ということで、あの当時の時代の流れが米国で企業を経営する上で大きな後ろ盾になっていたのは確かだと思います。

 

― 「異文化マネジメント」を軸に研修を積み重ね、数多くの経験と知識をお持ちの渥美さんが唱える「グローバリゼーション」の真の定義についてはどのようにお考えですか?

渥美: ここでまず私が申し上げたいことは、「インターナショナリゼーション(国際化)」と「グローバリゼーション」とは区別して考えなければならないということです。インターナショナルは、国と国との関係を中心にした「国」単位、グローバルは地球を丸ごと一つの単位として世界全体を把握する発想、視点、動きということです。グローバリゼーションが持つパワーは、内から拡張して行く力、つまり自国から外に出て他の国々と関りを持ちながら拡大する力=Expansionと、宇宙から見た地球と言う微細な存在の認識、つまり考えられないほど広大な宇宙の中に無数に存在する天球の一つが地球であるという理解が同時に存在するところにあり、言い換えれば、「時間軸」と「空間軸」の両方からものごとを捉える必要があるということだと思います。

 

 グローバリゼーションを理解するには、いわゆる「グローバル教育」というものが当然必要となってくると思いますが、グローバル人材に求められる資質についてはどのようにお考えですか?

渥美:まず、何よりも「総合能力+オリジナリティ+スピード+行動」が求められると思います。さらに言えば、総合能力の中には「マトリックスを駆使して全体を最適化する力」「戦略思考」「企画力」「付加価値を付ける力」「次世代モデルを考え出す力」「グローバルなコミュニケーション力」が含まれています。そして、今はまさに従来の学校教育や企業の新入社員教育は「21世紀型グローバル教育」に切り替えることを余儀なくされています。さらに、ここで私が特に強調して申し上げたいのは、日本が一流の国際プレーヤーであり続けるためには「日本のDNAを磨き、日本発の日本型グローバル育成を目指すこと」が何よりも大切だということなのです。つまり、民族の伝統である日本のDNA軸と世界共通の価値軸の両者を兼ね備えた人が真のグローバル人材になり得るのではないでしょうか。

 

― では、日本、或いは日本人のDNAと、それを活かしたグローバリゼーションについて渥美さんの見解を少し詳しく紐解いていただけますか?

渥美:それは一万年以上続いた縄文時代に私たちのDNAに刷り込まれた日本固有の「自然の摂理」に従った価値観だと思うんです。たとえば「神道」はモノ作りを「科学」と捉えず、「製造は創造」の意識の下、モノに作り手の魂を吹き込みます。世界全体は肉眼では捉えることはできない。だからこそ、「心眼」で捉える必要があり、グローバルな世界は「全体として一つ」と言う「般若心経」と共通している面があると思います。たとえば「もののあわれ」「わび・さび」と言う日本が歴史の中で培ってきた独特の美意識は世界にも通用するもので、これから先も世界全体で都市化やIT化がますます進む中で「心の息抜き」や「人間性」の象徴として、装飾的に使われるということも考えられます。私たち日本人は日本で生まれ育ち、教育を受け、仕事をすることで、無意識のうちに日本の現実を受けとめるのにちょうど良い「日本サイズの心」を育んでしまっている。でも、世界全体を受け止めるには「最大スケールの心の器 ― グローバル・マインド」を身に付けることが不可欠です。日本独特の倫理を兼ね備えた「独創性」の上に、真の意味での「グローバリゼーション」が加われば、まさに鬼に金棒! 「日本の倫理に則した」日本発のグローバル教育を世界に向けて発信し、日本からも数多くの優秀なグローバル人材を世界に送り出すことができるのではないかと思っています。

 

― 渥美さんが考える理想のグローバル人材を一言で言い当てていただけますか?

渥美:「世界目線<自国+地球+宇宙>を心のインフラとし、地球上で生きる全ての生命が平和でクリエイティブに生きる未来づくりに貢献できる人材」を私は敢えて「真のグローバル人材」と呼びたいと思います。

 

―それから今「倫理」とおっしゃいましたが、日本では「倫理」と「道徳」がともすれば「同義語」として捕らえられているように思いますが、そもそも「倫理」と「道徳」の定義について、渥美さんの見解を少しわかりやすく説明していただけますか?

渥美:敢えて言うなら、倫理は「時代や環境を越えて、人間として何が正しいかを定義する原理・原則(Principle)」そして、道徳は「それぞれの時代や環境下で何が徳性なのかを定義する標準(Standard)」だと思います。ですから「倫理」と「道徳」の二者は分けて考えられるべきものなんですよね。

 

― 最後に、今までのご経験を下に3つの法則と7つの動画から構成される「グローバル人材教育(世界共通教育)」プログラムを完成なさったと伺っていますが、そのプログラムを基に今後どのような普及活動および、ビジネス展開を考えていらっしゃるのでしょうか?

渥美:もちろん「グローバル教育」は一朝一夕でできるものではありません。保育園や幼稚園を含め、少なくとも「小中学校」から学校教育のプログラムに組み入れてもらうことが必要で、現在政府機関に対して、そうした働きかけをしているところです。そして、個別の決断ではありますが、既に「千葉県八千代市立東高津中学校」をはじめいくつかの学校が私どもの「グローバル教育プログラムを採用し、現場での教育に役立てています。少し時間軸を変えて100年後の子供達を見据えた上で、現在の「一問一答」教育からは得ることができない「多様性」や「独創性」さらに「命やモノを大切にする心」を養うグローバル教育が今こそ必要な時期に差し掛かっているのではないかと思います。そして、子供を育てる父兄の皆さんたちにもそうした認識を共有していただき、一人でも多くの日本発の「真のグローバル人材」さらに拡大して言えば「地球貢献人材」を世界に輩出して行きたいと思っています。

また、2021年10月を皮切りに、「グローバル人材アカデミー・オンラインスクール(globaljinzai.jp)」を開設し、現在数多くの人たちに私どものプログラムを紹介しているところです。さらに英文のプログラムも完成しましたので、今後はアメリカやイギリスをはじめ、海外の教育機関との連携を念頭に、日本発「グローバル人材育成」を世界に向けて幅広く紹介するビジネス展開も考えています。

 

― 色々とお話を伺っていると、渥美さんが唱えていらっしゃる「グローバリゼーション」は、現在国際社会が共通の目標としてゴールを定めている「SDGs」の理念やミッションと奇しくも重なるところがあり、そういう意味では渥美さんは次世代を見据える「時代の先駆者」ではないかと思います。本日は色々と貴重なお話をありがとうございました。

渥美・こちらこそ、ありがとうございました。

渥美育子:プロフィール:

グローバル教育研究所理事長兼グローバル教育社社長。青山学院大学助教授を経て、ハーバード大学研究員としてアメリカに渡る。研究終了後の1983年、ボストン郊外に「米国初の異文化マネジメント研修会社を設立。数多くのグローバル企業で人材育成や世界市場戦略アドバイサーを務める。著書に「世界で戦える人材の条件」「文化の世界地図」などがある。

 

 

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